IT業界には、特定の業種を指す専門用語が複数あります。
SIerとSESもその一つです。
SIerは、クライアントの現状を分析し、課題を発見したうえで、それを解決するためのシステム開発、運用、保守をすべて請け負う、「システムインテグレーション」を専門にするエンジニア、「システムインテグレーター」を指します。
対してSESは、「System Engineering Service」の略称であり、システムの開発、運用及び保守に関する技術者を提供するサービスを指します。
一見、非常に似通った意味を持つ言葉ですが、明確な区別点があります。
それは、SIerがシステムの開発や運用について自社で請け負う個人、ないし企業を指すのに対し、SESは技術者を提供する企業のサービスであるという点です。
専門的な技術を提供するという点では似ていますが、SIerはソフトウェアの開発や運用といったクライアントの依頼に対し、自社の「技術」のみを結果として提供するのに対し、SESは「技術者」を提供し、その技術者はクライアント企業に常駐する形で課題解決に努めることになります。
基本的にSESとクライアント企業との契約は準委任契約となり、一般的な企業の労働契約とは異なるため、SESで提供された技術者に対し、クライアント企業は指揮命令権を持ちません。
このように、SIerとSESの関係は対立構造ではありません。
むしろ、SIer企業が人手不足の際に、SESを利用して技術者を提供してもらうこともあります。
それぞれが、IT化が進む日本の中で各企業が、エンジニアの優れた技術力をサービスとして提供する方法を模索した結果だと言えるでしょう。